外国語が好きな人の中には「翻訳」という仕事に憧れたことがある人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、実務翻訳トライアルを受けて無事合格した体験談と、翻訳トライアルとTOEICスコア、高額商材、翻訳とAIなどについてお伝えします。

これから翻訳トライアルを受ける方の参考になれば幸いです。

翻訳の仕事に憧れていた過去

わたしは今年の夏からクラウドソーシングでライターの仕事を始めたのですが、そのときに、同時に挑戦したことがありました。

それは、翻訳トライアルです。

翻訳トライアルとは、翻訳会社に登録する前に受けるいわばお試し翻訳で、トライアルに合格するとその会社に登録できます。

翻訳トライアルは昔から気になっていました。

というのも、わたしは今は在米なのですが、まだ日本にいた20代のころ、英語を使って日本と海外をつなぐような仕事に憧れていたのです。

ですので、英語とはまったく無縁な仕事のかたわら、英検や通訳ガイド資格の試験を受けてみたり、総合旅行業務取扱管理者(当時は一般旅行業務取扱主任者)の資格を取って、海外旅行に行きつつ英語が使えるツアコンのバイトをしたりしていました。

翻訳基礎コースの通信講座を受講していたこともあります。

ですが、子どもが産まれたり、引っ越し先のフロリダではバイリンガルといえば英語とスペイン語で日本語の需要はまったくないように見えて盛り下がったりで、翻訳のことはうやむやになっていったのです。

翻訳トライアルを受けたきっかけ

口コミで翻訳や通訳の仕事をするようになったのはここ数年のことです。

そして、この夏ライターの仕事を始めるときに、同じクラウドソーシングサイトに載っている翻訳の仕事にも応募してみましたが、手応えはさっぱりでした。

理由は明らかで、実績のある翻訳者がたくさん登録しているので、わたしの口コミの経験だけでは見劣りしてしまうのです。

クライアント側の立場に立ってみれば、より実績の多い人にお願いしたいと思うのは当然ですよね。

日本だけでなく、アメリカのクラウドソーシングサイトUpworkでも同時に翻訳の仕事を探してみました。

すると、Upworkでは単価がびっくりするほど安いものが多く、その上フリーランサーに報酬を提案させて、より安く提案した人に発注する案件が多いと感じました。

Upworkでは3社とやり取りがありましたが、どこも成約にはいたりませんでした。

そこで、まともな翻訳の仕事を得るには、まずは翻訳会社に登録するのもいいのではないかと思ったのです。

そこには、口コミで仕事をしてきた自分の翻訳の腕は実際のところどうなのか知りたい、という腕試し的な気持ちもありました。

翻訳会社を探す

わたしが翻訳会社を探した方法は、グーグルで翻訳会社を検索し、ヒットした会社のウエブサイトを見て、自分ができる分野で在宅翻訳者を募集していたら応募する、というとてもシンプルなものです。

翻訳会社の中には、翻訳の資格を持っている人や経験〇年以上のみ応募可能なケース、そして今は翻訳者が足りているので募集していないという会社もちらほらありました。

また、早くて安いを全面的に売りにしている会社は避けました。

翻訳トライアルに応募する

わたしが今回応募したのは在宅実務翻訳のトライアルです。

日本の履歴書を書くのは久しぶりで、アメリカの履歴書の「年齢・性別は書かない、写真も基本ナシ」に慣れてしまったわたしは、日本の履歴書の年齢を書く欄を見てげんなりし、相当盛り下がりました^^

でも、めげずに正直に書いて、写真もコピペで貼り付けました。

履歴書は、良さそうなテンプレートをダウンロードして Word で作成し、応募要項で指定されたフォーマット、指定がなければ pdf でメールに添付して送りました。

応募するときに翻訳したい分野を選ぶのですが、会社によっては複数選べるところもあります。

できる分野を全部受けておけば仕事がたくさん来そうなものですが、たくさん選ぶと一度に受けるトライアルの量が増えて、体力的に結構きついかもしれません。

作業は座っているだけですが、なにしろ脳が消耗するので疲れるのです。

ですので、初めてトライアルを受けるときには、自分の力量を考えてほどほどにしておくのがいいかもしれません。

書類審査

翻訳トライアルに応募するとまずは書類審査があり、そこを通過して初めてトライアルに進むという流れの会社がほとんどでした。

応募した12社のうち、返事をもらえたのは5社。

そのうちの1社は、今は需要が減っているので募集していないということでしたが、わざわざ連絡をいただけたので親切な会社だと思いました。

書類審査の結果はすぐに来たところもあれば1週間くらいで連絡が来たところもあります。

翻訳トライアル

dictionary

翻訳トライアルの締め切りは、メール受領後〇日と固定のものと、開始する日をこちらが指定してその日から〇日後というパターンなど会社によって違いました。

トライアルって、翻訳の仕事をこれから始めようとする人だけでなく、既に翻訳家として活躍している人が他の翻訳会社を開拓するときにも受けるので、仕事量に合わせて調整できるように配慮されているのですね。

トライアルは問題と仕様書が送られてくることがほとんどです。

仕様書にはフォント、「ですます調」か「である調」か、もしくは文体から判断して最適なものを翻訳者が選ぶのか、全角・半角、ファイル名…などが指定されています。

仕様書に書いてあることに全部従うのが第一ステップといえますね。

次に、トライアルの問題は、「共通問題」と、応募時に選んだ分野の「専門問題」のふたつが出題されることが多く、中には複数の問題の中から好きなものを選べる会社もありました。

問題の内容はここには書けませんが、ざっくり言うとウエブ上でよく見るようなニュース記事だったり、官公庁系の文書だったり、マニュアルだったり、パンフレットだったり様々。

出された問題はどれもさっと読んで内容はわかるけど、いざ最適な日本語にしようとすると、結構時間がかかります。

それに、注意していないと見落としてしまうような引っ掛け的な部分も、もちろん盛り込まれていました。

あと、提出時に所用時間を記入する会社もありました。

問題を仕上げたら、もう一度仕様書を確認して、指定された方法で提出します。

仕様についてわからないことがあればトライアルを送ってくれた担当者の方にメールで質問するのもアリです。

トライアルも連絡のやりとりも、実際の仕事と想定して進めるといいと思います。

なお、提出後に間違いに気づいても差し替えはできませんので、ご注意を。

トライアル結果

トライアルの結果は、早い所で提出後1週間、遅いところで3週間くらいで送られてきました。

わたしが受けたトライアルの結果ですが、まず最初に来た2社が「残念ながら…」という結果。

2社立て続けに落ちたので、あれ、わたしのレベルってこんなものだったんだ!ふ~ん…、という感想でした。

その後、残り2社から無事合格通知をいただき(受験生みたいですね^^)一旦しぼんだエゴが回復したのです。

もしあなたがトライアルを受けて不合格だったときには、メールに返信して採点の手間に対するお礼を述べつつ、

またトライアルを受けたいと思う会社だったら、どれくらいの期間をあけたら再チャレンジできるか確認しておくといいのではないでしょうか。

そしてめでたくトライアルに合格したら、次は登録手続きに進みます。

翻訳トライアルにTOEICのスコアは必須?翻訳経験は?

ネット上の情報からまとめると、翻訳会社ではTOEICよりも実際の翻訳の出来の方が重要と考えているところがほとんどだという印象です。

わたしはTOEICは大昔に受けたけど、スコアはもう忘れてしまったので応募の書類には書きませんでしたが、無事合格できました。

反対に、翻訳経験は重要視されるようです。

もしあなたが、たとえばボランティアの経験などを「こんな小さな経験書いてもいいのかな?」と迷ったら、書いておくのが良いと思います。

経験とみなすかどうかを判断するのは翻訳会社なので。

最後に、基本的に翻訳会社でトライアルの際に重視されるのは次の5つと思ってよさそうです。

英語力
日本語力
専門知識
ミスがないか
ビジネスマナー

当たり前すぎる内容ですが、とにかく基本が大事だということですね。

翻訳トライアル前に読んでおくとよいおすすめ記事2つ

トライアル前に読んだ記事の中で、わたしが特に参考になると思った記事を2つご紹介します。もしまだ読んでいなかったらぜひチェックしてみてください。

翻訳者トライアル合格への道
川村インターナショナル

↑翻訳トライアルを初めて受ける初心者が持つ疑問のほとんどがカバーされています。

トライアルは頑張るな!
Aiden Pearce

↑切り口の良い文章で他の記事も読みやすく、翻訳者を目指す人のためになるアドバイス満載です。

翻訳者になりたい人をカモにする高額商材に注意

トライアル前にリサーチしていると、「翻訳起業」「翻訳で年収1千万」「翻訳で月100万」「トライアル合格者多数」などのうたい文句の広告をたくさん見かけました。

ここ数年「起業」「副業」ブームなので、このような広告はほかの業種でもたくさん見かけますが、へぇ~翻訳業界にもあるんだ!とちょっと意外でした。

さらに驚きだったのは、英語力より検索能力の方が大事ということで、TOEIC〇点(←かなり低目でしたが、今はサイトが削除されたようで確認できませんでした)でも大丈夫!というようなことが書いてあったこと。

そんなワケないじゃん!

英語力が足りなくて原文が理解できないのに翻訳できるとか、ありえないですよ。

常識でわかることなのですが…、

イージーマネーに惑わされると判断力が鈍ってしまう人たちは一定数存在するようです(←MLMの勧誘とかも同じですね)

今この記事を読んでいるあなたは、お金や近道の誘惑に惑わされませんように。

翻訳の仕事はAIの進化で将来なくなるからやめておいたほうがいいのか?

翻訳業は、レジ係の店員や運送業の運転手などと同じく、AIで将来仕事が減る・なくなると言われている分野のひとつですね。

AIと翻訳について、コードは書かないけどAIウォッチャーなオタクのわたしが思うところを書いてみます。

AIは、特に画像と音声分野で、業界の予想を上回るスピードで進化しているというのが、わたしの個人的な印象です。

翻訳の分野も格段に進化してきています。とはいえ、複雑な(超)長文の翻訳はまだ少し時間がかかりそうですし、ニュアンスを抽出して訳す必要のある文芸分野は、さらに時間がかかるのではと思います。(文法構造が似ている言語間の翻訳はこの限りではありません)

実際わたしがクラウドソーシングサイトUpworkで話をした案件のうちのふたつが、機械が翻訳したものを修正するという案件でした。

「一見プロジェクトの量は多いが、読めるかたちに修正するだけだからたいした時間はかからないはず」という説明でしたが、

中身を見ると、すべてが一からやり直さないといけないひどいレベルの日本語で、機械翻訳はまだまだなんだなと感じました。

とはいえ、依頼者はふたりとも日本語はまったくわからない方たちで、どちらの案件もとんでもなく安い報酬が提示されていました。

現在、実務翻訳は、完全手動から、いつになるかは未定ながら完全機械化もしくは完全に近いかたちの機械化への過渡期にすでに突入しているので、

これからは機械がきちんと訳せる原文にする作業と、機械が訳したものを正す作業の需要が増えていくのではないでしょうか。

それに伴い、実務翻訳者の単価が低下していくことは、恐らく間違いないと思います。

これから翻訳業を仕事として目指す方で、まだ分野が決まっていない方は、将来仕事がすぐになくならなそうな分野を選ぶ視点を持つのは大事かもしれません。

たとえば、レストランのメニューなど、単語や短文で構成されているものの翻訳は真っ先に淘汰されていくのでしょうね。

そして、昔からあってあまり変化のない分野は、すでにデータが蓄積されているので、機械が学習するスピードがほかの分野より早い可能性があります。

おわりに

いかがでしたか?

今のご時世、クラウドソーシングで「私は翻訳者です」と名乗れば誰でも自称翻訳者になれる時代ですが、

今回実際に翻訳トライアルを受けて思ったのは、トライアルというのは、初心者にとってある意味資格的要素を持っているということです。

もちろん会社によって合格の基準は違いますし、実際に存在する JTA 日本翻訳協会の翻訳関連資格や、日本翻訳連盟 JTF 翻訳検定などに準ずるものではありません。

それでも、翻訳トライアルに合格すれば、少なくとも翻訳会社から登録させてあげてもいいわよ的なお許しをもらえたレベルだといえますよね。

もちろん、翻訳トライアル合格はスタート地点。

実際に受注して納品した翻訳の質で評価されてはじめて、実績カウントが1になるのは言うまでもありません。

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‘machine learning’ Photo by Markus Winkler

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