トッレ・アルジェンティーナ広場
トッレ・アルジェンティーナ広場
Credit: Yuki Kai

トッレ・アルジェンティーナ広場は、紀元前にさかのぼる古代遺跡で、カエサル暗殺という歴史的重大事件が起こったとされる場所です。

また、遺跡まるごと猫の保護区域なので猫スポットでもあるという、猫好きには嬉しい遺跡なんです。

この記事ではトッレ・アルジェンティーナ広場について解説します。

ローマにいる間に絶対にしたいと思っていたことは次の3つ。

サン・ピエトロ大聖堂でクーポラにのぼる
システィーナ礼拝堂の天井画を見る
コロッセオとフォロ・ロマーノを見る

あとはトレビの泉などの有名どころに行ってもいいし、まぁ臨機応変にと思っていました。

ローマは名所だらけなので、詰め込もうと思えば思いっきり詰め込んで欲張りに観光できますけど、暑いときは余裕があったほうがいいですよね。

ちなみにわたしたちがローマに滞在したのは6月5日~8日ですが、昼間は夏の暑さでしたよ。

さて、サン・ピエトロ広場で法王様を見て幸せ気分にひたりつつ、一旦コンドに戻ってひとやすみ。

その後バスに乗ってコロッセオとフォロ・ロマーノを見に行くことにしました。

乗り換えのバス停 Largo Torre Argentina に近づくと、窓からなにやら遺跡っぽい石柱が!

なになに?!

ワクワクしながらバスを降ります。

バスの窓から遺跡の柱が
Credit: Yuki Kai

トッレ・アルジェンティーナ広場

バスの窓から見えた遺跡っぽい石柱は、トッレ・アルジェンティーナ広場という紀元前(!!!)にさかのぼる遺跡内の神殿の柱でした!

Wikipedia からお借りした地図 (*出典は記事の最後をご覧ください)を回転させて、写真に写っている遺跡を検証してみます。

トッレ・アルジェンティーナ広場

4つの神殿とポンペイウス劇場

トッレ・アルジェンティーナ広場はポンペイウス劇場に組み込まれた聖域(アレア・サクラ)です。

神殿 A :紀元前241年に、第一次ポエニ戦争で、共和政ローマがカルタゴに勝利したことを記念して建てられた、女神ユートゥルナの神殿。

神殿 B:紀元前101年、ローマ軍ががキンブリ人に勝利したことを記念して建てられた、運命の女神フォルトゥーナ Fortunaの神殿。

フォルトゥーナは英語 fortune の語源です。カール・オルフ作曲の「カルミナ・ブラーナ」では、全世界の支配者なる運命の女神 FORTUNA IMPERATRIX MUNDIとして称えられています。

神殿 C:紀元前4世紀から紀元前3世紀のものとされる、この中で最も古い神殿。豊穣の女神フェーローニアの神殿ではないかと言われています。

神殿 D:(写真には写っていません)紀元前2世紀に建てられた、守護神的な神々ラレース( Lares Permarini)の神殿。遺跡の大部分がいまだに道路の下に眠っています。

子どもの頃に読んだことのあるローマ神話の神々が、2000年以上も前に実際に崇拝され、神殿にまつられていたのですね。

そして今は、誰かがお供え物をしているとか、そういうことはまったくなく、猫が暮らすバス停わきの廃墟となっています。

ポンペイウス劇場にいたっては、取り壊されローマ市内の建設資材として再利用されたそう。

周辺には、残された劇場の一部を利用した地下室があったり、劇場の基礎をそのまま用いて建てられた建物もあります。

壁の中身が2000年前の劇場なんて、素敵ですね。

カエサル(ジュリアス・シーザー)の暗殺現場

「カエサル暗殺」ジャン=レオン・ジェローム作**

「ブルータス、お前もか」 (et tu, Brute?)

「来た、見た、勝った」(veni, vidi, vici)

このふたつのセリフ、聞いたことがありませんか?

どちらもカエサルの言葉とされている有名な引用句ですね。

2012年10月、トッレ・アルジェンティーナ広場を発掘中だったスペイン国立研究協議会 (以下CSIC) は、カエサルが暗殺された場所を発見したと発表しました。

この発見は、カエサルの後継者アウグストゥス(のちにパクス・ロマーナを実現したローマ帝国初代皇帝)が、カエサルの暗殺を悼むために暗殺場所に建てたとされる、幅3m、高さ2mを超えるコンクリートの記念碑がヒントになっています。

CSICは、発掘中に発見されたコンクリートの構造物がその記念碑であるとの見方をしています。

ただし、今のところ物品的証拠は発見されていないとのこと。

検索すると暗殺場所に印をつけた写真が時折出てくるのですが、暗殺場所特定のメディアリリースにそういった写真がないのは、まだ決定的物品証拠がないからなのでしょうね。

とはいえ、少なくとも、トッレ・アルジェンティーナ広場がカエサルの暗殺場所だった可能性は高そうです。

参考:[Science Daily] Spanish researchers find the exact spot where Julius Caesar was stabbed

Ides of March

ブルータスが紀元前42年に発行した銀貨の裏側

さて、カエサルが暗殺されたのは紀元前44年3月15日です。

この3月15日は Ides of March と呼ばれます。

写真***はカエサル暗殺者のひとりであるブルータスが紀元前42年に発行した銀貨の裏側で、 Ides of March(の日)にの略語 EID MAR (Eidibus Martiis) と記されています。

Ides とはローマ歴の13日または15日(3月、5月、7月、10月)のこと。

毎月の Ides は、ローマ神話の主神ユピテル(ジュピター)の聖なる日とされ、ユピテルを司る大祭司(フラメン・ディアリス Flamen Dialis)が白い羊を生贄に捧げていました。

カエサルがこの日に暗殺されたため、 Ides of March に不吉なイメージを抱くひとも少なくないようですね。

トッレ・アルジェンティーナは世界的に有名な猫スポット

ローマ古代遺跡トッレ・アルジェンティーナで保護されている猫

トッレ・アルジェンティーナ広場は、可愛い猫ちゃんたちが遺跡でのんびりくつろぐ、「猫の聖地」として猫好きにはたまらないスポットです。

というのも、この遺跡はまるごと猫の保護場所で、ここにいる猫たちは餌を与えられたり、去勢手術を受けたりなどのお世話をされているのです。

Torre Argentina Roman Cat Sanctuary

この日は真夏のように暑く、猫ちゃんたちは涼しい日陰に隠れていたのでしょうか、見かけた猫は写真の1匹だけでした。

猫スポットとして世界的にも有名で、CNNでも紹介されていますよ。

参考:[CNN Travel] 5 Places Where Cats Outshine Tourist Attractions

上記リンクの記事でCNN が紹介しているその他の猫スポットは:

  • 田代島と相島(日本)
  • 侯硐(台湾)
  • カルカン(トルコ)
  • フロリダ州キーウェスト(米国)

猫ラブのわたしは、去年田代島(通称猫島)へ遊びに行ってきましたが、ローマのこの日と同じようにとても暑い日だったため、猫ちゃんたちはみんな日陰でだらけてました…でもひたすらだらける猫ちゃんたちも、また可愛いんですよね?

ちなみに、このリストの中のキーウェストには、へミングウェイの6本指の猫 Snowball の子孫たちもいて、いつか会いにいきたいなぁと思っています。

トッレ・アルジェンティーナ広場まとめ

トッレ・アルジェンティーナ広場は:

・4つの神殿とポンペイウス劇場の一部を含む紀元前にさかのぼる古代遺跡

・カエサル暗殺という歴史的重大事件が起こったとされる場所

・遺跡まるごと猫の保護区域

・遺跡の一部しか発掘されていないので、広場まわりの道路や建物の下にはいまだに未発掘の遺跡が埋まっている

・Largo Torre Argentina バス停のすぐ側

・無料で見学できる

なぜローマの遺跡は地下に埋まっているのか

ナショナルジオグラフィック日本版「ローマの地下遺跡」

上の写真は、ナショナルジオグラフィック日本版のバックナンバー記事「ローマの地下遺跡」の紹介からお借りしてたものです。

古代の水道を通って遺跡を探検だなんて、楽しそうではないですか!

トッレ・アルジェンティーナ広場の神殿Dの大部分がいまだに地中にあるというはなしをしましたが、ローマにはそのほかにも未発掘の遺跡がまだまだ大量に地下に眠っているのだそうです。

ローマの地下鉄線工事がなかなか進まないのは、掘るとなにかしら遺跡が出てきて調査が始り、工事が延び延びになってしまうからだとか。

それにしても、どうして遺跡は地下に埋まっているのでしょう…?

あなたは不思議だと思いませんか?

遺跡が野ざらしでなく地下に埋まっている理由

そのヒミツは古代ローマの建築方法にあります。

ある都市が栄えそして滅びます。

滅亡の理由は様々です

天災、飢饉、疫病、戦争、政権交代などなど。

そして、街は廃墟となります。

しかし、一度都市が栄えた場所というのは、水、土壌、交通など人間が住むのに適した条件を備えていることが多いのです。

そういった場所は、時を経てまた新たな都市となることがあります。

その場合に、既存の建物を完全に取り壊して更地にしてから新たに建物を建てるのではなく、建物ごと埋めてしまったり、他の建築材料として使用するために取り壊し、残されたものを土台として使用したりします。

そういえば、前述のポンペイウス劇場も建築材料として取り壊されて再利用されていますよね。

同様に、この日後で見に行ったコロッセオやフォロ・ロマーノの石材も、午前中に見たサン・ピエトロ大聖堂の再建のために流用されています。

もちろん、泥やコンクリートなどの建材が風化して、崩れ落ちた堆積物の中に遺跡が埋もれていくケースもあります。

それにしても、建物ごと埋めてしまうなんて大変そうですが、当時のローマの建築技術をもってすると難しいことではなかったそうです。

なので、ローマの建物の下には遺跡が、もしかしたらさらにその下にも遺跡が埋まっているのかもしれませんね。

遺跡が地下に層を成しているかもしれないって、考えただけでも楽しくないですか?

まるで遺跡パフェです?

いちごパフェ

参考:[Forbs]Exploring Rome’s Hidden Underground City

古代遺跡をながめながらパニーニでお昼ご飯

イタリアのサンドイッチ

この後のコロッセオとフォロ・ロマーノ観光にそなえて、バス停すぐそばのカフェでサンドイッチを買ってランチ。

安くて美味しくて、素晴らしい?

こんなサンドイッチやパニーニを売る店はあちこちにあるので、ささっと済ませたい気軽なランチにおすすめです。

カフェ カメリーノ
Image Source: Google

ペイストリーも美味しそうだったこのカフェはバス停のすぐ目の前にあります。

Cafffe Camerino
Largo Arenula, 30 – Roma
tripadvisorのレビュー

おわりに

カエサルは暗殺された3日後の3月18日、フォロ・ロマーノ内で火葬されます。

フォロ・ロマーノへ行かれる方は、その前にトッレ・アルジェンティーナ広場に立ち寄って、カエサルの最期をたどってみるのもいいかもしれません。

*考古学エリアの地図: By I, Sailko, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3708526
**Jean-Léon Gérôme [Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons
***By derivative work: Ingsoc (talk)Brutus_Eid_Mar.jpg: Unknown – Brutus_Eid_Mar.jpg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4374104

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