ドイツ・イエナにゆかりのある歴史的な人物には、ツァイス、アッベ、ショットの光学系、そしてシラー、ゲーテなど文化系の著名人がいますが、もうひとり押さえたいのは、宗教改革で有名なマルティン・ルターです。

この記事では、ルターゆかりのイエナの教会、聖ミカエル教会(Stadtkirche Sankt Michael)を訪れたときのことを思い出してみます。

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ルターの宗教改革って何だっけ?

Luther portrait
マルティン・ルターと妻カタリナ ウフィツィ美術館にて撮影

学生のときに世界史を勉強したことがある人なら、きっと「ルター」「宗教改革」「免罪符」などの言葉に聞き覚えがあるのではないでしょうか?

よく覚えていない人やそんなの初めて聞いたという人のために、宗教改革が何だったかざっくりおさらいしてみますね。

 

免罪符

およそ500年前、魔女裁判が本気で行われ、地獄の存在が信じられていた中世ヨーロッパ。ローマ教皇を頂点に、カトリック教会が強い支配力を持っていた時代です。

当時、人が背負う罪を赦され地獄に行かずに済む方法は、教会が発行する免罪符を買うことでした。

免罪符の販売は、現代のビジネス視線でみると、大衆の恐怖心で人を動かすマーケティング手法の大成功ケースですね。この戦略で当時の教会は巨額のお金を集めることができたわけですが、結果として徐々に腐敗していきます。

それってフザけてない?と立ち上がったのが、マルティン・ルターです。

 

ちんぷんかんぷんなラテン語聖書

イエナ 聖ミカエル教会

また、当時の教会では礼拝や聖歌などはすべてラテン語だったことから、一般の人々は教会に礼拝に行っても何が話されているのかさっぱりわかっていませんでした。

当然、聖書もラテン語です。

ですので、当時の一般の人々の宗教的情報源は教会内の絵画や彫刻、ステンドグラスだったのですね。

ということは…当時の下々の方々は、まるでバイロイト音楽祭でドイツ語オペラを字幕なしで見ていたわたしみたい。何言ってるかさっぱりわかりませんでしたからね。消化できたのは、舞台や歌手のビジュアル面と歌とオーケストラのオーディオ面だけでした。(それでもバイロイトに行けたのは、わたしのオペラ史上輝かしい歴史です)

あれが毎週礼拝のたびにだと、それは厳しいでしょう。

そして、それも絶対間違ってるよね?と、ルターはラテン語の聖書をドイツ語に翻訳します。

また、簡単なドイツ語の賛美歌も作り、自らリュートを演奏して歌い広めます。(ミュージシャンでもあったのですね!)

 

95か条の論題

イエナ 聖ミカエル教会
イエナ 聖ミカエル教会
  • 免罪符を買えば救われるって、絶対間違ってるし!
  • 聖書に書いてあることだけを信仰するべきだ!
  • 教会は権力にかこつけてあれこれ勝手なことを言うな!

…などなど、ルターが95か条の論題(95 Thesen)をヴィッテンベルク城教会の門に張り出したのが、宗教改革の発端です。

ルターの宗教改革は、ちょうど印刷技術が手書きの書き写しや木版印刷から活版印刷に進化を遂げた頃、とタイミング的にも絶妙でした。

ルターの95か条の論題やドイツ語版聖書は、新しい印刷技術によって大量に印刷され(聖書は100万部ともいわれます)、劇的なスピードでヨーロッパ中に広がっていきます。また、ルターの作った賛美歌も、彼の思想を拡散するのに一役買ったといわれています。

ルターは当然のごとく教会と対立しますが(だって免罪符売れなくなったら教会、お金に困っちゃうし)、決して自分の主張を取り下げませんでした。

 

宗教改革の結果

ルターの95か条の論題から始まった宗教改革は、後にローマ・カトリック教会からプロテスタントの分離へと発展します。

結果として、ルターによるルター教会、スイスの改革派教会、ヘンリー8世によって始まったイギリス国教会などが成立しました。

 

イエナにルターゆかりの教会がある

ルターが教えを説いた教会

説教台 Pulpit
ルターが教えを説いた説教台 Luther delivered several sermons from this pulpit

ルターは聖ミカエル教会で何度か教えを説いています。彼が立った説教台が今も教会内にありますよ。

ここから、どんな声で熱く語ったんでしょうね。

 

ルターの墓標のオリジナル

ルターの墓標
イエナにあるルターの墓標のオリジナル

さて、ルターのお墓は、イエナから車で2時間ほどのウィッテンベルクにあるのですが、ルターの墓標のオリジナル(Grabplatte Martin Luthers)はイエナの聖ミカエル教会にあります。

ウィッテンベルクにある墓標は写真のイエナの墓標のコピーで、1892年に造られました。

彼の右肩上の紋章はルター派のシンボル、ルターの薔薇(Luther rose)です。

エアフルト(Erfurt)のベル職人、ヘンリ・ジグラー(Henry Zeigler )によって作られたこの墓標は、シュマルカルデン戦争(Schmalkaldic War)の影響でウィッテンベルクへの輸送ができなくなり、イエナの聖ミカエル教会に置かれることになりました。

ウィッテンベルクにあるルターの墓のプレートは別のデザインですが、本当はこの墓標が使われるはずだったのだそう。コピーの墓標はウィッテンベルクの教会の説教台の後ろの壁に祀られています。

イエナ 聖ミカエル教会
イエナ 聖ミカエル教会 左手には美しいパイプオルガンもあります

イエナ 聖ミカエル教会

 

マルクト広場にも寄ってみよう

マルクト広場
イエナのマルクト広場

教会の近くにマルクト広場があり、出店が並んでいました。歩いてすぐですので、ちょっと寄ってみてはいかがですか?そこで売っているお菓子やプレッツェル、ソーセージなんかを試してみるのも楽しそう。もちろん生ビールもありましたよ。

野菜
八百屋さんのスタンドも

 

聖ミカエル教会 場所

Stadtkirche Sankt Michael
Kirchpl. 1, 07743 Jena, Germany

jena map

1: 【イエナ】Fritz Mitteでドイツのソウルフード、カリーヴルストでご紹介したFritz Mitte

2:この記事でご紹介したマルクト広場(Markt)

 

おわりに

いかがでしたか?

ヨーロッパを旅行していて楽しいことのひとつは、一見地味そうな小さな街にも歴史がぎゅっと詰まっているところ。

えっ?ここがあの〇〇が〇〇したところ?という発見が、ミーハーなわたしの旅を感慨深いものにしたりします。

実際にその場で肌で感じてみるというのは、旅のみならず生きていく楽しみに深さを与える方法のひとつではないかしら。

対象物は歴史的なものに限ることはありません。

気の向くままに、出かけて感じて、あなたの好奇心を満たしてあげてくださいね。

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